犬の社会的本能を利用しよう

犬を正しくしつけるためには、まず、犬そのものが生来持っている習性や本能を理解することが大切です。
これらを十分に理解して、それを利用したしつけを行うことがしつけを成功させる重要なポイントになります。
犬の本能は次の6つに大別できます。
① 逃げる獲物を追いかけてえさにするという栄養本能
② 体を動かしたいという運動本能
③ 子孫を増やすための繁殖本能
④ 自分のテリトリーを持とうとする自衛本能
⑤ 身を守ったり、恐怖から逃げ出そうとする逃走本能
⑥ 犬社会に適応するための社会的本能
このうち、人間と共存するためにもっとも必要なものが社会的本能です。
なかでも祖先であるオオカミから受け継いだ「群れをなす」という群棲本能や、権力を示そうとする権勢本能、信頼した相手に従うという服従本能は、しつけをするうえでとくに理解してほしい重要な本能です。
犬との信頼関係の確立がポイント

犬の社会は家族や群れでの力関係が成り立ち、その能力をいかんなく発揮して仲間に指示を与え、獲物をつかまえたり、外敵から群れを守ってきました。
ですから、犬の社会では大黒柱的リーダーには服従して群れを形成していました。これはオオカミなどに限らず、群れを成す動物には必ず司令塔、指針となるべき存在がいるのと同じです。
そうして群れの秩序と統制がはかられていきます。
このような理由から、犬はたとえ相手が人間であろうと群れの一員として、自分の位置を確認しようとするのです。
最近では、家族の関係がフラットになったり、逆に人形のようにかわいがり過ぎてしまい関係性が崩れているご家庭も多くあります。
時折、「絶対服従のボス」になれ、とおっしゃる訓練士さんもいますが、力技や恐怖による絶対服従ではなく「絶対的に信頼できる」存在でいることが家族の中に、強い信頼関係で指揮ができる人がいれば、犬は母親のように甘えつつ、父親のように慕ってくれます。
ただし、相手を信頼関係が築けていない場合は、言うことを聞こうとはしません。
とくに体が小さい子どもは、信頼するリーダー(ご両親)が自分でない相手ばかり構っていることでヤキモチをやく場合もあります。
これを防ぐためには、信頼関係を築いている人が、最初に守るべき存在であることを教え込む必要があります。
甘やかしたり、時と場合によって態度を変えてしまったりするることも間題です。
いつしか犬は「家族の中では、自分が何をしても大丈夫だ」と勘違いして、 さまざまな間題行動を起こすようになります 。そうなってしまってからでは手を焼き、早く治った物や防げたことでさえ時間をかけてなおさなければなりません。
しつけは最初が肝心です。
犬との間にきち んとした信頼関係を確立すれば、犬は忠誠心の強い動物ですから、 一度築いた言頼関係はくずれにくいでしよう。
群棲本能がもたらす犬の行動のまとめ

1.リーダーに服従
犬が飼い主の指示に従うのは、飼い主を群れの司令塔・リーダーとして認めて尊敬している証拠です。
これは犬社会に掟に従った行動です。
反面、自分が認めていない、従うべきでない存在と認知されると、その人の指示には決して従わないことも。
2.家族を守る
見慣れない人に吠える、他の犬に攻撃するなどの犬の行動は、家族を守ろうとする本能から出るもの。
犬にとって一家として猫などの同居する動物も含め、群れと認められた物に危害を与えると認識し、連帯意識がこうした行動を起こします。
犬がいいことと悪いことを区別して
犬の習性や本能の中には、この他に、物をかじる、吠える、穴を掘るなど、人間の生活に不都合なものも多くあります。
しかし、それらの行為をむやみに禁止すると、犬はストレスがたまり病気になってしまう場合もあります。
次にあげる主な習性とその理由をよく理解して、上手なしつけを行いましょう。
やってもいいことと悪いことをきちんと区別して教えることが大事です。
犬は動くものを追いかける

野生のオオカミは、獲物をつかまえて食べることによって、自らの生命を維持しています。
この捕獲本能を受け継いだ犬は、目の前で動くものに非常に興味を持ち、追いかけようとします。
尻尾などを追いかけまわすのも、ここからきているます。
中でもダックスフンドやセッター種など、もともと狩猟犬として活躍していた犬種ほど、 この本能が強いようです。捕獲本能が高じると、動くものは何でも追いかけようとします。
例えば、自転車や走っている人などもその対象になります。
気をつけたいのは、走っている子どもです。
犬は遊び半分で追いかけますが、犬に追いかけられた子どもはパニックになって転倒し、思わぬケガをさせてしまうことも少なくありません。
散歩の途中でこういう場面に遭遇したら、リードを短く持って決して離さないようにしましょう。
必要以上に対象物を追いかけるようなら要注意。運動不足などによるストレスが考えられます。
犬の吠え

狩猟などで活躍していた犬は、獲物を捕まえることはもちろん、吠えるという行為も必要でした。
ですから、ワンワンほえるのも本能のひとつなのです。
ただし、犬の鳴き声は決して単一ではありません。
嬉しいとき、悲しいとき、怒っているとき、何かを知らせているときなど、時と場合によって鳴き方が変わります。言葉を話せない犬は、こうして飼い主になんらからのメッセージを伝えているのです。
ときどき耳にする犬の遠吠えは、仲間を集めるための合図だったり、犬同士の大事なコミュニケーションとしての意味があります。
また、見知らぬものを警戒するという警戒本能も犬を吠えさせる原因のひとつです。
場合によっては吠えるだけでなく、相手を攻撃することもあります。
マーキング

犬が電柱や垣根にオシッコをかけている姿をよくみかけます。
これは他犬に「ここは自分のテリトリーだ」とアピールするマーキング(縄張り行動)です。
このマーキングはオス特有の行動ですが、発情期に入るとメスも行います。
犬はその匂いで、その犬は自分より強いか弱いか、いつどんな犬がここを通ったかまでわかるのではないかといわれています。
排泄後にする砂をかけるような仕草もマーキングの一種です。
地面に爪痕を付け、足の裏の汗腺から出る匂いもこすりつけています。
犬の習性Q&A
犬が雷を怖がるのはなぜ?
犬の聴力はたいへん優れており、雷のとどろきも人間以上に大きくクリアに聞こえます。
まして地響きや稲妻を伴うものであれば驚異的です。
また、やがて降りはじめる雨は、穴居生活をしていた犬の祖先には大敵でした。
性能のよい聴力と、住まいが水浸しになるという不安が雷嫌いにしているようです。
犬はどうして片足を告てオシッコをするの?
マーキングは、ほかの犬に自分のテリトリーをアピールする行為です。
自分の存在を他犬に気づかせるためには、なるべく高い位置にオシッコをかける必要があります。
そこで、片足を上げて高く飛ばそうとするのです。こうすれば、自分のオシッコの上にほかの犬がオシッコをかける心配も少なくなり、鼻の高さにつけた匂いを、複数の犬にかいでもらえるからです。
サイレンが聞こえると遠吠えをするのはなぜ?
犬の聴力は人間より遥かに高度で、音の高低の違いを1音の 8分の1まで聞き分けることができます。
群れで生活していたころは、この聴力を生かして、仲間との連絡を遠吠えで行っていました。
とりわけ高音には敏感で、はるか遠く離れた相手にも伝わりました。
ですから、サイレンのような高い音は、犬には仲間の遠吠えに似ているため、「ワオーン」と鳴いて返事をしてしまうのです。
フンの上で転がるのはなぜ?
この困ったクセは、狩猟時代から受け継いだ習性です。
獲物を捕まえて食べることで生命を維持していた犬にとって、獲物の捕獲に失敗することは許されないことでした。
そこで、わざと他の動物のフンの上で転がって、自分の体臭を消して獲物に近づいて行ったのです。
この習性の名残りが、犬を奇怪な行動に走らせるのです。とくに柴犬などの猟犬はこの傾向が強いようです。
犬のあいさつ

犬のあいさつは、相手の犬のおしりの匂いを嗅ぐことからはじまります。
犬の肛門部分には、その犬個有のにおいを出す袋があり、その匂いにより個体にまつわる多くの情報を発しています。
はじめて会った犬同士が、相手のおしりをクンクンかぐのは、オスなのかメスなのか、カは強いのか弱いのか、自分との相性はいいのか悪いのかなどの情報を交換しているからです。
このときに、しつぽで自分の肛門を隠してしまう犬は弱い犬、しつぽを持ち上げて堂々と肛門をかがせる犬は強い犬といわれています。
穴を掘る

犬は穴掘り名人。庭の花壇を荒して、花をめちゃくちゃにしたと嘆く人も多いようです。
犬が穴を掘るそもそもの目的は、そこに何かを埋めるため。
昔、オオカミだったころ、捕まえた獲物をあとで食べるために、穴を掘って埋めたという行為の名残りです。
あるいは、巣づくりの意味もあります。
夏の穴掘りの場合は、単にひんやりとした土の上に寝そべりたいからという理由もあります。
異常に穴を掘るようであれば、運動不足や愛情不足によるストレスが考えられます。
散歩やポール遊びなどをして、ストレスを解消してあげまょう。
犬の帰巣本能
どこか遠くに置き去りにされた犬が、何千キロの道を歩いて、無事飼い主のもとに戻ったという話をよく聞きます。
これは犬の帰巣本能によるものです。
犬は生まれつき鋭い方向感覚を備えています。この感覚と家に帰ろうとする本能が、犬を家までたどり着かせるのです。
しかし、そのメカニズムはいまだに解明されていません。
唯一考えられることは、昔、群れをつくって生活していた犬には、仲間とはぐれても、もとの居場所に戻れる「超能力」のようなものが備わっているのではないかということです。
ただし、すべての犬が家に帰れるかというと、そうではありません。
人間に保護たされて育った犬や、家から一歩も外に出た事のない犬は、迷子になったらお手上げで、家に帰れなくなるといわれています。こうした万一の場合に備え、犬の首輪には迷子札をつけておきましよう。
ものをかじる

犬を飼いはじめてまず最初にぶつかる間題は、犬がスリッパやソファー、家具 の角など、何でもかじってボロボロにし てしまうことでしょう。
とくに悩まされるのは、生後3~6か 月の子犬の頃。
この時期、犬の歯は乳 歯から永久歯に生え代わります。そのむず痒さを抑えるために、物をかじるといわれますが、この頃の犬は人の赤ちゃんと同じように好奇心旺盛で、何でも口にくわえて確認し、かじってみたくなるもの。
しかし、中には殺虫剤や電気コードなど、かじると危いものもあります。
また、噛み方の程度がわからず、人を本気で噛んでしまう犬にもなりかねません。ですので、早いうちに制止する練習をしましょう。
犬の五感Q&A
飼い主の足音を聞き分けられるのはなぜ?
犬のすぐれた聴覚によるものです 音の大きさの聞き取り能力は、人間の約6倍あるといわれています。
それに、前後左右に自在に動く耳は、音の方向の聞き分けに役立ち、方向(人間は16方向)からの音を区別できます。
ですから、耳に馴染んだ飼い主の足音を聞き分けることはお手のもの。たとえ騒音の中でも、その足音を聞き分けられます。
犬が火事をいち早く察知できるのはなぜ?
嗅覚は五感の中でもっとも発達した感覚。かぎ分け能力は人間の100万倍といわれています。
これは、生きていくために獲物をつかまえていた狩猟時代に発達しました。
森の中に住んでいた犬の祖先にとって、森林火災は恐怖のひとつでした。
そのため、「ものが焦げる匂い」は危険を運ぶものとして、今でも遺伝子の中に受け継がれているといわれています。
どうして目の前のボールが見えないの?
犬の視野は約250度(人間は約180度)で、遠くで動くものをとらえる能力も人間よりはるかに優れていますが、近くを見る力は人間より劣っています。
それは、犬の水晶体が人間より厚いことや、焦点距離を調節する機能が劣っていることが原因です。
ですから、遠くのものに焦点を合わせるのは得意ですが、すぐ目の前にあるものに焦点を合わせるのは苦手なのです。
犬がガッガッものを食べるのはなぜ?
犬の味覚はたいへんシンプルで、苦みと甘み、塩味、酸味しか認識できないといわれています。
当然、味覚も鈍く、ものを味わって食べるということはありません。
犬の味覚が発達しなかったのは、狩猟時代の生存競争にあります。やっとっかまえた獲物は、誰よりも早く食べるために丸飲みしていたのです。
この習性により、今でもほとんど噛まずにものを食べてしまうわけです。

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